また福祉施設で、介護スタッフによる暴力事件が起きたらしい。いつもなら、スタッフ1名のみが暴行・障害等で逮捕される事件がクローズアップされることが多いが、今回は、分かっているだけで4名のスタッフが犯行に加担したとのこと。
勿論、実際に暴行したわけではないが、傍観していたり、見て見ぬふりをしていたスタッフはほかにいなかっただろうか。限定された空間である施設では、集団行動・規律が求められるが、同時に息苦しさも出てくる。
自分の思う通りに利用者は動くとは限らないし、精神的に追い込まれてストレスがたまったりするのも予見できるだろう。
ただ、自身のメンタルコントロールがうまくいかなかったり、職場が整備されていなかったりすると、手近な手段である、暴力など身体的圧力に頼りがちになってしまう。
今回のように、集団での犯行となれば、正常な倫理感など麻痺・破綻していたのであろう。
「あの人がやっているから、自分も」という安易な迎合に陥りやすい。
犯罪は、ときに公衆の面前で起こした場合、うまくいく場合が意外とあるらしい。まわりにたくさん人が見ていても、「だれかが助けにいくだろう」と、みんなが思ってしまい、行動が石化する集団心理になることもあるらしい。
だれかが、口火をきれれば、後に続くものは出てくるのだが、最初の一歩が難しい。
今回の事件も、長期にわたり、繰り返されていたようだが、介護スタッフも、最初から粗暴な性格だったなら当然だと思う。ただ、この仕事を始める前は人の役に立ちたいという使命溢れる想いでいたのかもしれない。
集団のなかで、一人意見を異にするのは、勇気がいる。上司や雇用主なら、なおさらキャリアにも影響するかもしれない。
集団と個の対立概念は、いつの時代も永遠のテーマだ。ただ、個が集まって集団を形成しているのも、事実。
どのような状況であろうと、的確な倫理感と、大局を見抜く眼や勇気を養うこと。
危険な集団心理に打ち勝つ、強い個の存在は、福祉サービス利用者の命を救うこともできるだろう。
強い個が集まった組織をつくること。口でいうのはたやすいが、それを成し遂げていくことも、永遠のテーマであるにちがいない。