介護の仕事は、肉体労働だと言われる。たしかに、身体に負担のかからない動き方は、巷に溢れてはいるが、慣れないうちは、どうしても力みが加わり、力に頼りがちになってしまう。
腰を痛めるのは職業病のようなものと言われ、爆弾を抱えながら仕事をしている人も多い。ギックリ越しになってしまうと、地獄の苦しみを味わうため、常に腰痛には気をつけねばならない。
力はあるから、と変に自信過剰なのも禁物だ。対応する利用者によって、ふだん使ったことのない筋肉等にも負担がいくことがある。たとえば40キロの利用者でも、完全に脱力し、介護者に委ねた人間の身体は想像以上に重く感じる。
在宅介護となれば、狭い空間での介護もありうる。
あらゆるシチュエーションが存在するため、完全に身体を守るのは難しいかもしれない。
幸い、各介護方法のやり方も発展し、たとえばスライディングシートなど福祉用具を使った介護も浸透してきた。
介護ロボット導入の話もあるが、すべての施設や家庭に導入は難しい。人力が介入する以上は、フィジカルのメンテナンス論は、つねに念頭に置かねばならない。
「人に優しく、自分に厳しく」とよく言うが、でも介護では「自分にも優しく」と言ってよいのではないか。
格好つける必要も奇をてらう必要もない。楽をして、誰もを幸せにできないものか。
身体も心も硬かったら、誰も幸せにならない。
本質的なフィジカルメンテナンスの根源にあるのは、こうした力を抜いてよいという、優しく余裕あるメンタルの理念かもしれない。